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#「ファルマって、もしかして俺のこと?」(何なんだその、どっかの製薬会社みたいななまえは) | #「ファルマって、もしかして俺のこと?」(何なんだその、どっかの製薬会社みたいななまえは) | ||
#彼は微妙な気分になる。たった今、見も知らぬ彼女に付けられたあだ名なのだろうか。 | #彼は微妙な気分になる。たった今、見も知らぬ彼女に付けられたあだ名なのだろうか。 | ||
+ | #「はい、ファルマ、ド、メディシス様でございます。」 | ||
+ | #ド、メディシス | ||
+ | #中世のフィレンツェの支配者であったメディチ家のフランス語読みに似ているな、と彼は感じだ。だいたい、日本人顔なのに誰と間違れているのだろう、とひとしきり疑問を並べて嫌いなことに気づいてしまった。 |
2018년 2월 6일 (화) 13:34 판
二話 転生薬学者と異世界
- ありえないほどの吐気と寝覚めの悪さ、そして全身へ拡がるの体の痛みを覚えながら、彼は瞼をもたげる。セットしておいたアラームの音が聞こえない。さては寝過ごしたか、と彼が慌てると、一つずつ情報が入ってきた。
- 石造りの部室の低い天井。石壁には朱のタペストリがかかっている。
- 窓は小さく、 昼間だというのに薄暗い。部室の奥では暖炉の火がぱちぱちと薪をはぜさせ、燃えていた。彼が身を横たえているベットのシーツはガサガサとして、藁のようなにおいがした。寝袋の感触ではない。
- (あれ。ここは研究室じゃないぞ?なんでだ?)研究室で仮眠についたはずが、一体どこに、運び込まれたのかと、彼は戸惑った。
- 「よいしょ、よいしょ」ベッドサイドには、甲斐甲斐しく動き回る少女がいる。
- 「ここは?」
- 居心地の悪さを感じつつ、彼は少女に尋ねる。
- 「ファルマ様は雷に当たってしまわれたのです!記憶、思い出せますか?」
- 少女は顔を近くに寄せ、彼を心配そうに覗き込む。
- 「雷が光ったと思ったら、ファルマ様がたおれてしまって..... 目が覚めてよかったです。」
- 「落雷....」
- 研究室を出た記憶がないのに、落雷?とこで?と彼の頭の中に幾多の疑問が浮かぶ。
- 少女の年の頃は十歳ほどで、あどけない笑みを向けていた。落雷の現場を目撃したのだという。
- 彼女は簡素なドレスに、白いエプロンをかけている。美しく艶やかなピンクゴールド色の長髪を、肩にするりと流れている。頭には白いかぶりものをちょこんと乗せた、吸い込まれそうな碧眼の可憐な美少女だ。コスプレでもしているのだろうか、と想像力に乏しい彼はそんな感想いた。
- (研究室から外に出て、落雷に遭ったところをコスプレ少女に助けられた?)
- 彼は慌てて起き上がろうとするが、弛緩しきった全身の筋肉がそれを許さない。
- 「いや、そえが、記憶がはっきりとしないんだ。君は誰?」
- それを聞いた少女から笑顏が消え、寂しげな顔を向ける。
- 「もしかして、私のことも忘れちゃいました、ね?そ、そうですよね!普通と違う青い雷に打たれたんですもの、そうですよね」
- (一体どんな状況なんだ?何をしていて落雷に遭った?)
- 雷に当たった、という状況そのものが彼には飲み込めない。研究室から出ていないのだから、当たるわけがないのだ。だが、彼女は詳しいことを知らないようだった。
- 「こうしちゃいれない、早く大学に戻らないと」
- 「大学というと、帝国薬学校のですか?」
- 「え?」
- 「記憶が混乱しておられますね」
- 彼女は咳払いをし、すました顔をすると、スカートの裾をちょいと持ち上げ、恭しく一礼する。
- 「ではでは、あらためまして自己紹介します。召使いのシャルロットです。いつものようにロッテとお呼びください。旦那様に召抱えていただいた母とともに、幼少の頃よりお屋敷にお仕えしてまいりました。何でもお申し付けください、ね?ファルマ様」
- この屋敷に住み込みで、母子ともに働いているらしい。子供が召使いだなんてとんでもない、警察に連れて行かなければと彼が思案していると、「ファルマ様、ファルマ様」と二度よびかけられる。何度も呼ばれるので、彼は気づく。
- 「ファルマって、もしかして俺のこと?」(何なんだその、どっかの製薬会社みたいななまえは)
- 彼は微妙な気分になる。たった今、見も知らぬ彼女に付けられたあだ名なのだろうか。
- 「はい、ファルマ、ド、メディシス様でございます。」
- ド、メディシス
- 中世のフィレンツェの支配者であったメディチ家のフランス語読みに似ているな、と彼は感じだ。だいたい、日本人顔なのに誰と間違れているのだろう、とひとしきり疑問を並べて嫌いなことに気づいてしまった。